Coinhiveを使ったWebサーバはなぜ犯罪とされたのか
前回 の続きです。ここでは、判決文を通じて、なぜ有罪とされたのか、というのを解説していきたいと思います。
無保証です。
この判決文は、いろいろと解釈が難しいのか分かりませんが、現時点では真っ当な法解釈の文章がでてきません
これは、プログラマから見た解釈を書こうと試みてますが、全くの無保証です。
というかですね、、これ解釈できる弁護士っているんですかね。。いや無料でですよ?
会社で契約している弁護士は仕事だから、解釈しているのかもしれませんが。
法的に素人の私から見たら難解
過ぎてかなり引くんですが。
普通の弁護士からすれば、大したことはないのでしょう。
というところだと思ってみてください。
犯罪とされた事実
判決文は長々と書いてありますが、以下が事実だと認定されました。
- CoinhiveをWebサーバに設置した(のが犯罪)
- 「同意を得ることなく」計算するための「演算機能」を提供させた
- (主語不明だが、被告が、だろう)仮想通貨モネロの承認作業「等」の演算を行わせた
- Webサーバに
無断で
設置したことで、「マイニング」を行わせ、
「演算機能」を提供し、「不正に」報酬を得たことで違反である。
ものすごーくはしょってますが、上記のようになります。
「反意図性」について
前回書いた通り、反意図性とは「一般不正意図性」のことです。簡単に言えば「一般的に不正と思えば犯罪」。
その反意図性は、以下で判断されたようです。
(判決文) 「マイニング」させられた閲覧者の利害を不当に軽視しているという観点から、 ... 反意図性の判断をもっぱら本件プログラムの認識可能性を基準に判断し
とあることから、「素人」が思うであろう「Webサーバにアクセスしただけで」
マイニングをしたということが、分からないという点が特に重視
されたものと思われます。何度も出てきますので。
そして、
(判決文) プログラムの反意図性は、ジャバスクリプトのプログラムというだけでは反意図性を否定することはできない
という一文を頂きました。サンドボックスというものは無視したのでしょう。
プログラムの認識可能性
==「マイニング」を黙ってしたことを特に重要視するこの判決文では、関係ないのは確かです。
不正性について
不正性については、前回も書いた通り、不正性とは「NOT一般許容性」ですので、マイニング自体には「皆が許容すべき」という理由はありません。ので普通に「不正性」を事実認定されています。
案の定、
(判決文) 閲覧PCに「知らせずに」機能の提供させるものであるため、社会的に許容すべき点は見当たらない
ということになってます。
違法性阻却事由についてはすべて却下
プログラマの人は認識が薄いかもしれませんが、「刑法」などの法律と書いてある条文と同じ行為としたからと言って、すぐに逮捕されるわけではありません。
何らかの理由があれば、正当性が認められる場合があります。
それらを違法性阻却事由
といいます。
違法性阻却事由は何一つ認められませんでした。
以下の理由で違法性阻却事由は認められませんでした。
- Webサーバの質向上
- 使用者に気づかない方法で受忍させられない==「だまってしてはいけない」方を重視
- 他者Webサーバとの比較
- より違法性の高い方と比較する理由を却下
- 賛否が分かれているのも「社会的容認性」として「否定」する方向なので却下
- 広告プログラムのと比較
- 「見た目」で、広告と、「マイニング」が異なるのは明らかなので却下
- 消費電力がより少ない、という理由も「電子計算機の破壊/盗用」がなくても「ウイルス罪」に問う理由がある、という理由で却下
- 捜査機関の注意喚起
- 閲覧者に気づかれずに「マイニング」させる機能が「否定的」な意見が「ある」のを知っていた
- なので「故意」だと事実認定されて却下。
めっちゃ疲れた。。
要は、「何も言わずに」「マイニング」をしたことが違反として前面に押し出されています。
前回、保護法益について書いたと思いますが、その保護法益を犯しているという意味で、 Coinhiveを設置したことが「安心してプログラムを使う権利」を侵しているのは確かだ
という論理から導き出していると思われます。
私から言わせれば、ですが
たくさん言いたいことしかありませんが、ここでは一つだけ挙げておきます。
そもそも仮想通貨を窃盗したからでしょ?
閲覧PCからでは、見て分からない==「プログラムの認識可能性を基準」であることをことさら重要視していますが、その理由が書いてありません。
「マイニング」を事前に知らなかった、と事実から、導き出すのはいいですが、本質的な所が抜けてます。この犯罪が有罪だと思う人は99%、「仮想通貨を窃盗したから」
だと思い込んでます。
当然裁判官だって「仮想通貨を窃盗したから」
というのが理由で裁いているに違いないと思います。
が判決文では、そんなことは全く出てません
正確に言うと、技術者が思うほどは仮想通貨という話が出ていないことは確かです。
「マイニング」という単語は複数出ているので、仮想通貨が関係しているのは確かですが、仮想通貨がどう関係しているとかは判決文には出てきません。
私が「普通」に考えるにそれって変だと思うのですが、誰も指摘しません。
皆が「犯罪だ」と思う事実と、違う内容で犯罪として断罪するのっておかしいと思わないのでしょうか?
誰もが「窃盗」だと思っているのに、「ウイルス罪」だというのは変だと思うのですが。
犯罪を犯したという意味では変わらない、と言われるのかもしれませんが、犯罪側に倒せば何でもいいというのはおかしいです。
本来なら、真っ当に「仮想通貨を窃盗」として起訴すべきだ、というのが裁判官が言う必要があると思います。有罪にする気なら特に。
おわりに
プログラマ的に何が犯罪とされたのかを解説してみました。
書いては見ましたが、あまり参考にはならないかもしれません。